「木のえほん」を読んだとき、シンプルでほのぼのとした物語の内容とともに、木の手触りの良さになんとも言えない懐かしさを覚えました。手に伝わる心地よさだけでなく、智頭杉が持つ力強さを感じます。これは子どもたちにとってとても良い影響があると思います。幼少期は、感覚や感性が育まれる時期。子どもたちが興味の赴くままにこの本を楽しむ姿が思い浮かびます。カラフルな絵を目で見て、読んでくれる声を聞き、手で触り、匂いを嗅いだり。良い素材だからこそ安心して、まさに五感で楽しめるのがこの本の良さだと思います。

 小学校の校長を務めた頃、子どもたちの発想力・創造力にはいつも驚かされました。大人が読んでも気づきが多いのですが、子どもたちは大人の常識にとどまらず、「これはなんだろう」「この続きはこうなるかも」と頭の中でストーリーをどんどん膨らませることでしょう。子どもも大人も、想像の世界に連れ出してくれる本だと思います。

 手に取った瞬間、ふわっと立ちのぼる木々の香り。

「木のえほん」は、まるで“えほんの木”そのもののように、私を森の中へと誘います。


ページを開くと、色鮮やかな絵とやさしい言葉たちが、まるで風のように、静かに物語の世界へと導いてくれます。

指先でそっと木肌に触れてみると、そこに息づく登場人物たちが、枝の上から顔をのぞかせたり、穴の奥からひょっこり現れたりして——不思議と、愛おしい気持ちがこみ上げてきます。


気づけば、遠い昔、子どものころに初めて絵本を開いたあの瞬間の喜びがよみがえっていました。

「木のえほん」は、どの世代の人にも、やさしさと安らぎを届けてくれる本です。


ぜひ、みなさまも手に取ってみてください。

書かれていない登場人物のくらしや思いに想像をふくらませたり、図鑑で魚や貝を調べてみたりするのも楽しいでしょう。誰かと「みずのうた」を口ずさみ、「ようかい」の絵を描いて見せ合う——
そんな時間が、物語の世界をいっそう豊かにしてくれます。


そしていつか、「木のえほん」の世界を胸に、鳥取の地を歩いてみてください。


私のおすすめは、眠る前のひとときにこの本を開き、木の香につつまれながら、物語とともにまどろむことです。