「木のえほん」づくりは、全ての工程が鳥取県内で行われています。
小さな県だからこそ、本当に良いものを作ろうという思いでつながり、それを形にすることができた本だと自信を持っています。

 絵本の板は、本の中でも出てくる智頭の杉。節が出ないように丁寧に枝打ちされた美しい杉は、部位によって木目の表情も楽しめます。「どの部分に使われるかを聞き、最適だと思う部位を選ぶ」と話すのは長年製材業を営むサカモト(智頭町)の坂本晴信さん。樹齢70〜80年の柔らかい部分を本に使用し、「体温と同調してくれ、人肌にすぐになじむのが杉という木。柔らかさも子どもたちが手にするのに向いています」。一枚7ミリという薄さに製材すれば、通常は乾燥によって反り返りが出やすくなりますが、杉を知り尽くした経験と技術で反りにくいように加工しました。

 こだわり抜いた木の良さを生かすよう、印刷も工夫しています。しっかりと色を乗せるシルク印刷ではなく、インクを紫外線で定着させるUVプリンターを使用。木目の美しさを残しつつカラフルな色をつけることができ、柔らかい仕上がりとなりました。印刷を担ったパレット(鳥取市)の常村護さんは「因州和紙や智頭杉という地域資源は、いつになっても本質的な良さを持っています。この絵本を通し、少しでも鳥取から世界に繋がることに貢献できれば」と期待しています。

 仕上げの加工は、障がい者の就労事業所である「ねっこ」(鳥取市)。立体絵本として主人公が切り抜かれる工夫が凝らされており、スムーズにめくられるようにするには細かな作業が求められます。「形や大きさによっても切る角度も僅かに変わり、かなり神経を使っています」と山本英章さん。右手一本を巧みに使い、「読んでもらう時の子どもたちの笑顔を想像しながら作ります。手に取って、木の良さを感じてもらえたら嬉しいですね」。一枚一枚、丁寧に仕上げています。